徒然なる生活

読書感想や日常で感じたことの備忘録です。

何者 見てきました

 

こんばんは


朝井リョウさん原作の「何者」見てきました。



10月15日の公開初日に見ようと思ったのですが、いろいろ億劫になってしまって...




重い腰をあげて、見に行くかあ~という感覚で見てきました。




いろいろ億劫になってしまったというこの気持ちこそ、
私が感じる朝井リョウ作品に対するイメージそのものです。


「桐島部活やめるってよ」の原作者として有名になった朝井リョウさん。
平成生まれの作家として初めて直木賞をとったのが今回映画化された「何者」という作品です。



「桐島」も「何者」もたしか私が大学2年ぐらいのときに読んだのですが、最初の読了感はじめじめとしていて、なんか嫌な作品だなあという感覚。
しかし、なぜか嫌いとかそういう感情とは結び付かなくて、もやもやとした、いやな感覚が残ったのが記憶に残っています。


そんな読書経験があってから、約2年越しぐらいに「何者」という作品が映画化されると聞いて、
「めちゃ見に行きたい!」と思うと同時に、
活字での作品の記憶が戻ってきて、なんか躊躇いというか億劫な気持ちになりました。



これが冒頭に書いた億劫だなという感覚です。



そんな話は置いといて、


映画の内容です。

ネタバレたぶんそんなないです。

以下、映画.comの引用です。

演劇サークルで脚本を書き、人を分析することが得意な主人公、拓人。
 何も考えていないように見えて、着実に内定に近づいていく、光太郎。
 光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せる実直な瑞月。
 「意識高い系」だが、なかなか結果が出せない理香。
 就活は決められたルールに乗るだけだと言いながら焦りを隠せない隆良。
 22歳大学生の5人はそれぞれの思いや悩みをSNSに吐き出しながら就活に励むが、人間関係は徐々に変化していく。


ちょうど私の世代が主人公の物語で、ほんとにうまい具合に私ぐらいの世代が感じる周囲の人間の嫌な場面や、
私自身の嫌なところや、弱いところを描き出した嫌な作品です。


拓人を演じた俳優の佐藤健さんが取材で、初めて台本を読んだとき、どんだけ性格のわるい人間が書いたのだろうと思ったそうです。

朝井リョウさんのラジオをたまに聞いたりするのですが、朝井リョウさん自身はそんな陰湿な感じはあんまりしません笑。

朝井リョウさんは人間の性悪的なところを描き出すのがうまい作家さんなんですね。

美点凝視という言葉があります。
人の良いところを、美しいところを意識的に見ましょうという言葉です。

その言葉の背景として、人は悪いところばかりに目が行くという傾向があります。


朝井リョウさんはそんなもっとも人間的な視点で作品をストレートに描ける人だと思います。
「何者」でも性悪説的な人間の性(さが)を実直に描き出しています。
そのツールとして、現代人を風刺したtwitter就活に対する個々人の価値観や人間性を映し出すことにより、より作品にリアルさがでて、特に私のような若い世代が受け止めにくいことをストレートに伝えてくる作品になっています。


私がすこし思うのは、朝井リョウさん大丈夫かな?ということです。
人の悪いところを見るとそれを自分自身に置き換えて考えたりして、どうしても気持ちが沈んでしまうと思うのです。
抑うつになったりしないかなと少し心配しています笑。

そんな感じで朝井リョウさんという人を感じている私ですが、
映画「何者」に関して思うのは、



あ、これは無視してはいけない作品だなということです。



朝井リョウ作品に触れると、なんかもやもやが残ります。
そのもやもやを嫌だなと思って突き放すと、弱い自分に目をそむけてる気分になるし、
反対に、私自身にもこういうところあると思って、全肯定すると、なんか優等生みたいなって作中の「理香」みたいな嫌味なやつな感じに自分がなっている感じがする。
遠くにも置けないし、近くにも置けない、そんな作品かなと思います。

そんな作品を書く作家さんほかにいないなと思います。
朝井リョウさんの作品自体が私自身に眠っている悪性みたいなところに焦点を当て、その作品自体と向き合うことで精神安定剤みたいな役割をしているというなんかしてやられた感がしますが、そんな作品なんですね。



作中と同世代の方はたぶん自分自身のことをネタにされているような感覚がしていい気持ちはしないかもしれません。

しかし、我々自身があと何年後かにこの作品を触れたときに、ああこんな時もあったなと感じることができたら、たぶんなにかしら人間として成長していることになるんではないかなと思うのであります。

朝井リョウ作品に触れたもやもやはそのままとっておいて、とりあえず向き合ってみる。
そしてこれからまたおんなじことをやってみる。
また何年後かに再読したいと思うような作品でした。

私自身今年で23になって就職して自立したと思ってもまだまだ20代って青臭いんだなとしみじみ感じます。




映画自体は、原作の感じよりもすこしホラーに近づいていて、エンターテインメント感が増しているので、この映画をみて何か感じたい人も、何も考えずに見ようと思っている人も楽しめる思います。(個人的に思ったのが、二階堂ふみのスタイルがやはり良い。今公開しているスクープ!でも思いました)
原作だとより人間の性(さが)に踏み切っているので、ぜひ原作もおすすめです。

長くなりましたがお読みいただきありがとうございました。
次回は読書録でも書こうと思っています。
さいなら

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)